名もなきストライカーの栄枯盛衰

名もなきストライカーの栄枯盛衰


“RabonaRabona, Musa Okwonga”



サッカー選手の中には歓声とブーイングを同時に受ける選手たちがいる。



これらの選手たちは大体チームで非常に重要な役割を担っているにもかかわらず、


怠惰に見えるプレイスタイルのために批判される。



著者(Musa Okwonga)は、そんな”何もしない”ストライカーたちの人生を探る。



スコアを決めること以外、何もしないストライカーたちを。



孤独なストライカーの役割については、常に独特の悲劇がまとわりつく。



ゴールキーパーは、限定されたライン内でゲームの大部分を費やす孤独なポジションに見えるが、


少なくとも彼らはホームと呼ぶことができるペナルティエリア持っている。



それに比べて孤独なストライカーには固定の足場がない。



オフサイドトラップの外縁を歩き回ると非難される彼らは居場所を持たない宇宙人のようであり、


さらに極度のプレッシャーがかかる状況でのみ活躍を求められる。



それ以外は、彼らが注意を引かない限り、ポツンと取り残されていることがほとんどだ。



上記で述べたことは少々メロドラマ的であり、孤独なストライカーであることは贅沢なもの、


切望されるべき立場であると考える人もいるかもしれない。 もしそう考える人がいたとしたら、それは正しい。



90分間に一度あるかどうかのチャンスを逃してはいけないポジションであるため、


健全な自意識を持たずしてストライカーとして成功することはできない。



スポットライトが当たることが確約されているパフォーマーである以上、


それが当たるときは完璧なプレーをしなくてはならないのだ。



ボールが近くに来た時しか走らないストライカーの人生とは奇妙なものだ。



ストライカーはしばしば密猟者、捕食者、またはスナイパーなど、


臆病でないにしても戦いへの参加が常に寄生的なものに例えられることからも、その奇妙さがわかる。



彼らはいきなり飛び出してくる狡猾なクリーチャーのように扱われる。



だが真実はディフェンダーが単純に彼らに注意を払うのを止めてしまっているだけなのだ。









ロマーリオが長く輝かしい経歴の中で幾度となくディフェンダーから取り残されていたことは注目に値する。



YouTubeでブラジルのゴールコンピレーション動画を観ると、


彼が動き始める直前にサンバからワープドライブへたったの2秒で加速している場面を何度も目にするだろう


- 彼のそばには誰もいないのだ。 まるでセンターバックが彼の脅威について幾度となく教えられていたにもかかわらず、


彼を目の前にすると「コブラは今日疲れていそうだし、それに眠そうだから大丈夫だな。



」と結論付けてしまうようだ。



残念なことに、彼らはコブラがそれほど疲れていないことに後から気づくことになる。



アルゼンチンのセルヒオ・アグエロは、しばしばロマーリオの継承人と言われるほど最高のフィニッシャーだ。



しかしそれはスピードやテクニックが理由ではなく、とらえどころのなさが理由である。



アグエロは非常によく”働く”選手であり、ジョゼップ・グアルディオラがマンチェスター・シティに着任以降はコンビネーションプレイにも積極性が表れているが、


それでもまだ彼のショーが発達するにつれてステージの端に引っ込んでいると感じられる。



しかしながら、緊張が最高潮の場面での彼の登場は、まさにDJが観客を最高に盛り上げた直後の激変のようだ。



名もなきストライカーたちは相当な批判を受けるが、そのほとんどが理不尽なものである。



試合中の走りが足りない、もしくはプレイが見苦しいなどの理由で酷評を受けることもしばしばある。



しかしながら、これらの指摘は本来のポイントを忘れがちだ。



酷評された選手たちにとって、ディフェンダーのレーダーに捉えられないことはむしろ重要なことなのである。



それを成功させる最短方法は、誰も気に留めないような印象を与えることだ。



1991年にレッドスター・ベオグラード所属でヨーロピアンカップを獲得したダルコ・パンチェフ(Darko Pancev)も同様に、誤解ともいえる理由で批判された選手だ。



パンチェフはイタリア・セリエAの舞台で自分のプレイが期待に沿えなかった理由として「サッカーには走るストライカーと走らないストライカーがいる」と説明した。



また、彼は「私にはもって生まれたゴールの才能があり、ゴール付近30メートルにいるときだけ走った。



しかしインテル・ミラノは、このスタイルを受け入れたくなかったようだ」と話した。



レッドスターがヨーロピアンチャンピオンになった年のバロンドールの投票でパンチェフが2位を獲得したことを考えれば、


パンチェフは少なくとも自分のプレイについて理解していたということが想定できる。



パンチェフに最も共感したであろう選手は、自身のチームのサポーターをも含む大勢の人に何年にも渡り批判、


中傷され続けたフィリッポ・インザーギではないだろうか。



インザーギは最盛期の頃でさえ低いスキルやボロボロに見えるプレイスタイルで嘲笑された代表的な名前のないストライカーだった。



インザーギの素晴らしい力は遅咲きながらも伝説的な映画俳優ピーター・フォークが演じたコロンボ刑事のように過小評価されていたが、



それでも彼は大衆の笑い物を演じた。



悪役がコロンボ刑事に勝ったと油断した時、もしくはドアの外でバタついている彼を見たとき、コロンボ刑事は立ち止まり、



犯人の本質を暴くたったひとつの劇的な質問を投げかけるのだ。



まさにそれはインザーギを始めとするすべてのワールドクラスの”名もなきストライカーたち”のやり方である。



彼らはディフェンダーの軽蔑のまなざしの下にひっそりと身を隠し、そして隙をついて水面から急上昇し歴史に名を刻むのだ。



http://www.rabonamag.com





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